福祉的な色合いが強かった介護業界だが、規制緩和や構造改革などが進行して一般企業の参入が相次ぎ、米国的な経営手法がデイサービスでも次々に導入されてきた。
そして、コストの削減、競争力の強化や収益性の向上が経営の主なキーワードとなり、非正規雇用者を増やすことでコストを削減できる、資本力の増強と規模の拡大によって競争力を高める、できるだけ多くの顧客を獲得して囲い込むといったことが声高に言われてきたのである。
合理的な経営手法の導入により介護事業の効率化が進むことは決して悪いことではないが、米国式経営手法の考え方は、何かが欠けているとも言われる。
それは人を大切にするという経営哲学だ。
米国式の経営では人も、モノや金、情報と同等のレベルの経営資源とみなされる。
一方、日本は江戸時代から人とモノや金の間に線を引く考えが根付いており、それが近代型の日本型経営へと受け継がれてきたのだ。
介護や医療の業界では利用者と従業員を大切にする日本型経営が最も適する業界である。
特に家庭的な雰囲気が特徴の地域密着型デイサービスは日本型経営なくして成り立たない。
デイサービス事業における人とは利用者であり、そこで働く従業員である。
また、規模の大きいところにはない長所もあり、利用を希望する人も少なくない。
経営の面でも月に300人を超える利用者を受け入れられるようになり、収入を大きく増やすチャンスも生まれており、踏ん張って地域密着型に移行した事業所が損をしているところはないのだ。